沼に飛ぶ!!

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病院のクレーマー(モンスターペイシェント)とその対策

○病院の中のストレスはほとんどクレーマーのせい


 病院はストレスの多い職場であるといわれており、その原因はほとんどがクレーマーによるものです。クレームをうけた病院スタッフは、その怒りや悲しみを自分より下の立場のスタッフに向けます。例えば患者からクレームを受けたナースは、後輩のナースを強く叱責したり嫌味を言います。それで後輩のナースが嫌になって病院を退職すると、人手不足から残ったナースの業務が圧迫されます。残ったナースはストレスがたまり、患者に優しく接することができなくなります。こうするとまたクレー厶が生まれるのです。こうして負の連鎖が続きます。これは病院のどこでも起きうることです。



○クレーマーが増えている


 大量消費社会や経済状況の悪化という時勢が浸透した90年代あたりからクレーマーは増加傾向にあり、患者の権利意識は強くなっています。患者にとって病院はデパートやコンビニエンスストアのように、お金さえ払えば心地よいサービスを受けられる場所ととらえられているようです。お客様としての対応を求められています。しかし、日本の医療は国民皆保険であり患者が払っているのは0〜3割でほとんどは税金によってまかなわれています。つまり財源は有限なのです。商品を求める人がいて大量生産して消費してみんながハッピーという他のサービス業とは違います。この高齢化社会でこのまま患者が求めるままに高度化していく医療が提供され続ければ、日本の財政は崩壊するでしょう。現に日本の社会保障費は歳入(予算)の3割を超え4割に迫っています。それに人の体という曖昧なものを相手にしている以上、お金を払っても必ず病状がよくなるという確実性のあるものではないです。病状がよくならないことはクレームに繋がりますが、それを病院のせいにされても仕方ないこともあるのではないでしょうか。



○特に救急外来はクレームが起きる


 特に救急外来はクレームの温床です。主な原因は医師や看護師といったスタッフの数が足りないことにあります。当直医師は常に不足しているため、ほとんどが日中の業務を終えたまま、そのまま夜の救急勤務に突入します。そのためかなり眠いです。そういったなかでプライオリティを置かれるのは、もちろん患者の救命であり患者の心地よさではありません。そのためより重症で救命が必要な患者に時間が割かれます。軽症な患者ほど待ち時間が長かったり、ぞんざいに扱われたりします。救命外来のスタッフには、優しい言葉をかけたり笑顔で接するなんて余裕はないのです。医者が最も重要視しているのは救命であり患者の健康寿命の延長ですが、これが患者の希望と一致しないことは救急外来以外でもよくあります。患者が求める心地よさや自分の思い通りになることが医者側の思惑と一致しないことで誤解が生まれ、クレーマーが生まれるのです。



○クレーマーVS医師となってしまう


 病院のクレーム対策の主に担っているのは医師もしくは看護師となってしまっていることが多いです。つまり患者に対して、クレームの原因となった医療を施した人が出てきて説明を行います。私も今まで何度かそういった場面にあってきました。ナース等に「患者さん怒ってるんで説明してください」と言われて、狭い診察室のなかに患者とその家族が数人いる状況に詰め込まれ、一人で戦わなければなりません。しかもそれは一回で終わらないこともあります。クレーマーは何度でもクレーム内容を少しずつ変えてやってきます。「医者をだせ」と言われて、そのまま医者が出ていき忙しい業務の合間をぬって何度もクレームを受けているうちに、医師は病んでいき退職するのです。



○クレーマー対策で重要なのは事務職員


 こうしたクレーム対策において病院で最も重要な役割を果たすのが、事務職員だと思います。なぜなら彼らは医療に携わっていないからです。医師や看護師は医療を施した本人なので、クレーム内容に対して冷静に考えることができません。クレームは100%クレーマーが悪いということはなく、なにかしら医療を施した側にも悪かったところがあるものです。そうした自責の念があるため、クレーマーに痛いところを突かれてしまいます。人を傷つけてしまったというのは恐ろしいことではないでしょうか。誰だって車を運転していて人をひいてしまったらショックです。そもそも医師や看護師というのは他人に奉仕することに幸せを感じ、感情が他人の影響を受けやすいという性質を持つ人が多いので余計につらいと思います。それに比べて事務職員は医療に直接携わっていないので、罵られても心を乱さず第三者的な位置からクレーマー対策が出来るのです。



○そもそもクレーマーを生み出さない


 クレーマーというのは多かれ少なかれ、もともと精神的問題を抱えている人が多いです。精神的問題があるから病院に来るような症状が起きたのか、別の病気があって症状が起きたから精神的問題が起きたのか、もしくはその両方です。そしてそうしたクレーマー予備軍は一度診察すればなんとなくわかります。目が見開かれており、黒目の白目に対する割合が多く顔面が非対称です。髪型は整えられていないことが多く、歩くのが早いです。典型的でない症状を訴えて早口でよく喋りますが、こちらの話は聞いていません。病院スタッフに対して懐疑的で態度で接し、額のしわを歪めています。検査をしても異常は見つからず、内服加療で症状はあまり良くなりません。こうしたクレーマー予備軍は、自分が軽視されていると感じられる事象が重なることで突然爆発します。受付の事務職員は患者が一番最初に接する人ですので、そこでクレーマーのスイッチをオンにしてしまうことがあるのです。個人の診療所であると、長く勤めている事務職員は医師にある(と、されている)威光をそのまま自分にあるように感じ、患者に冷たく振る舞うことがあります。社長秘書が偉そうにする原理と一緒です。雰囲気のいい病院では事務職員が患者に優しく丁寧に接します。事務職員であっても、患者の病状を心配して患者の苦しさを気遣うようなポーズした方が、クレーマーを生み出さないようになると思います。



○クレームが起きたときどうすべきか


 クレームが発生したときはどうすべきでしょうか。まず、「ゆっくりお話をお伺いしますので」と言って応接室に通します。応接室は圧迫感を感じさせない程度の広さを確保し、いつでも逃げられるように通路側にクレームを受ける人が座ります。病院側はクレームを受ける当人だけでなく、役職付きの事務職員でクレーム対応に慣れた人を同席させます。病院側がクレーム側の人数を上回るだけの人数を同席させるようにします。記録係を配置します。長居される恐れが出るのでお茶を出してはいけません。とにかくクレーマーは話をしたいので、聴き手となることを意識してクレームを吐き出させます。このとき事務職員は相槌を打ったり、オウム返しをして共感を示すといいでしょう。クレームを受けた人は、「不快な思いを与えてしまいすみません/ご要望に沿えずすみません」と謝罪します。謝罪はクレーマーの心を懐柔させる効果があります。不快な気持ちをさせてしまったことに謝罪することは、ミスを認めたことにはなりません。明らかにおかしいことを言われたら、ルールとその根拠を説明して相手の言い分を受け入れられないことを示します。特に違法行為による要求や不当な脅しには、毅然として拒否しなくてはなりません。警察や弁護士に連絡することも考えましょう。「誠意を見せろ」と言われたら、「ご不快な思いをさせて申し訳ありません。こうしておわびするのが私の誠意です」と答えましょう。「念書を書け」と言われても絶対にサインしてはいけません。文書を出すときは病院側の形式で出しましょう。難しいことを言われたら、「自分だけでは判断できないので上司や担当部署と相談して後日返答します」と言います。院長をすぐに出してはいけません。事務職員が「私が事務長でこうした時の責任者となっています」と言いましょう。院長を出すことは相手のプライドを満足させる効果がありますが、その場での決着を迫られることになります。院長を出すのは1日以上おいて、クレーマーをクールダウンさせてからにしましょう。最後に、「クレームを改善の機会と考え、今後組織として患者の不満に取り組む」という姿勢をみせて終わりにします。1時間を超えても終わりそうになかったら、「本日はこれ以上はお話できません」と言いましょう。それでも終わらなければ、「退去してください、あなたの行動は不退去罪です。警察に通報しますがよろしいですね」と言ってもいいです。不退去罪、威力業務妨害、脅迫罪、侮辱罪といった法律の名前を知っておくことは大きな武器となります。また日をおいてクレーマーが来ることもあります。ここでクレーマーの求めるまま、クレームを受ける医者を出すことを続けると問題が泥沼化することがあります。早めに決着をつけましょう。クレーム被害職員の責任は追求せず、再発防止という目的をはっきりさせてカウンセリングを行います。病院のトップに報告し再発防止に努めましょう。普段からクレーム対応マニュアルを作っておくことや、ロールプレイングなどクレーム対策訓練をするのも有効です。



○クレーマーに傷つけられた心はどこにいくのか


 クレームの手段として大きな声で怒鳴り散らしたり、人格を否定するような事を言うのは暴力と変わりません。しかし、外でやれば犯罪になるような暴力や暴言・セクハラも、病院内で患者という弱者がするなら犯罪にはならないようです。私は暴力を憎みます。クレーマーに傷つられた怒りや悲しみはどこにいけばいいのでしょうか。トラウマというのはつまりは、また同じ目に合わないようにするための防衛精神です。獣に襲われた場所を避ける動物と変わりません。つまり、どんなクレーマーが来ても対策できる自分であればトラウマに苦しまなくて済むのです。クレーマー対策はクレームごとによる違いが多くあり、一朝一夕に身につくものではありません。経験を積むことでクレーマーに負けない心を築いていくしかないでしょう。そして決して患者さんに本当の愛情を持ったりしてはいけません。それは裏切られることがあります。決して患者さんを本気で治したいなどと傲慢なことを考えてはいけません。ただ優しい医師という仮面を被って教科書通りの妥当な医療を患者さんの求めるままにすればいいのです。それと訴訟になったときのためにカルテは詳細に書いておきましょう。どんなに気をつけていても病院というのはトラブルが起きるところです。クレームが起きるところです。傷ついても患者が恐ろしく見えても頑張るしかないのです。全ての人が怒鳴ったり、恐ろしい顔をしてつめよったりしないで、言葉で不満を伝えるようになって欲しいです。



※参考文献


もつれない患者との会話術 第2版


警備のプロが書いた 院内クレーム安全対応のキホン