沼に飛ぶ!!

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大腸カメラを受けてみたけれど肛門から何か入ってくるなんて普通の事じゃない

 前からいつかは大腸カメラを受けようと思っていた。というのも、わたしは大腸カメラをやる側なので患者さんの感覚を知ってみたかったのだ。全く痛くなかったという患者さんもいれば、痛くてたまらなかった患者さんもいた。開腹の手術歴や子宮内膜症の既往があると、腹膜が繊維化して大腸カメラが痛くなりやすいようだが、それだけでは説明できないことも多かった。あと1ヵ月で女性の内視鏡の先生が退職されるということもあり、急きょ大腸カメラを受けることにしてみた。


○前日夜

 前日は消化のよいものを少し食べ、下剤を飲むことになっている。お腹が空いてしょうがなかったが、ピコスルファート(シンラック)という液状の下剤をビールで流し込んだ。今までさんざん患者さんにピコスルファートを処方してきたのに、初めてピコスルファートが甘いことを知った。やはり何ごとも経験してみるものだ。下剤を飲んでも何ともなかったので、まぁ明日でればいいかと考えていた。しかし2時間後、地獄をみることになった。吐き気と腹痛、下痢でトイレを離れられない。もともと便秘ぎみだったせいか、とにかくお腹のぜん動が痛い。トイレに何度も通っていたが寝ないわけにもいかないと思い、ベッドに戻って無理やり寝た。


○当日朝

 昨日の苦しみはなんだったのかというくらい爽やかに朝を迎えた。当日は検査までにマグコロールという液体の下剤を1800ml飲んで、便を透明にしなければならない。便が残っていると大腸カメラをしても便が邪魔でうまく腸を観察できないのだ。よくダイエットサプリの広告では腸にこびりついた宿便をすっきり出して体質改善!とか言われているから、腸内の便を全部出したらすっきりするのかと思っていた。しかし現実ではそうもならず、脱水でぐったりとしてしまった。マグコロールがポカリスエットのような味なのでおいしくゴクゴク飲んで、水を飲むのをおこたっていたのだ。マグコロールの水分は水様便として全て出てしまっていたようだ。検査前からグロッキーになりながら看護師さんに点滴をしてもらい、おしりのところに縦の切れ込みが入っている紙のトランクスに着替える。いよいよ名前を呼ばれて検査室に点滴棒を引きながら入った。


○大腸カメラを受ける

 大腸カメラを受けた病院は私の勤務している病院であり、先生も看護師さんも同僚なのでなごやかな雰囲気だった。先生におしりを向けるように診察台に横になる。目の前には大腸カメラからみた映像を写す画面があった。わたしも大腸カメラをやる側として流れもわかっているのだが、かなり緊張していた。よく考えれば肛門から太さ1cm以上、長さ1m以上の黒いホースのような医療器具を入れるなんてどうかしてる。まず肛門に先生のゼリーのついた人差し指が入る。大腸カメラが入りやすいように潤滑剤を塗るのだ。そして大腸カメラが入ってくる。わたしが大腸カメラをやるときは「肛門に力が入っているとカメラが入らないので力を抜いてくださいね」などと声をかけていた。だが自分が大腸カメラを受ける側になって無茶言うな、と思った。肛門から何か入ってくるなんて普通の事じゃない。大腸カメラの最初の関門はS状結腸を越えることだ。大腸は肛門から直腸、S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸、盲腸で構成されており、そのなかでS状結腸、横行結腸、盲腸は腹膜に固定されていない。そのため腹腔内をぶらぶらとしており、大腸カメラを入れずらい構造なのだ。S状結腸を越えるのは内視鏡のドクターの技術が必要になってくる。しゃくとり虫のように少し進んでは引いて腸を大腸カメラでたぐりよせていくのだ。これをpull 法というが、うまくいかない腸の場合は大腸カメラを押し入れてS状結腸を越える。これをpush法という。当然、pull法の方が痛くないのだが、わたしの腸は後者の方だったようだ。先生が「ダメだ」と言いながら、わたしの腸にグイグイとカメラを入れてきた。腸に痛みを感じる神経はないが、腸からつながった腹膜には神経があるので、わたしの腸は引っ張られてものすごくお腹を下したときのような痛みが広がった。しかもわたしは「どんな感じなのか体験したいから鎮静剤の点滴は使わなくていいですよ!」と言いのけていた。「イタイイタイって!ホリゾンホリゾン使って~!」などと情けないことを言っていたが、先生は全く動じずにカメラを進めた。しかも肛門にぬったゼリーには痛み止めが入っていなかったので、先生がカメラを押したり引いたりするたびに便を強制的に出し入れさせられているような感覚があって気持ち悪かった。普段はキシロカインゼリーという痛み止めが肛門に塗られるのだが、キシロカインゼリーを作っている小林化工が水虫の治療薬に睡眠薬を混入させていまうという事故を起こしたことで業務停止をくらい(※1)、キシロカインゼリーが不足していたのだ。あとでキシロカインゼリーを追加してもらったら、肛門の感覚が一気になくなって楽になった。以前はこんなゼリー塗るくらいで効くのかなぁと思っていたのだが、すごい威力を持っていたのだ。S状結腸を越えてしまえばあとはなんということもなかった。あっという間にカメラは盲腸まで到達し、腸内を観察しながら抜かれていった。わたしは満身創痍になりながら「もう適当でいいですよ」と言ったけれど、先生は「ダメですよちゃんと見ないと」と優しく答え、小さなポリープを見つけて取ってくれた。若年でも無害な小さいポリープがあることはある。終わってしまえば解放感ですっきりとした。ずっといつかやろうと思っていたことが終わったのだ。わたしの年齢からしてあと20年は大腸カメラをやることはないだろう。


○1週間後

 1週間後に大腸カメラでとったポリープの病理結果がでた。腺腫ということだった。腺腫は大きくなると癌化することがあるので、「これから2~3年ごとに大腸カメラを受けたほうがいいですね」と言われてしまった。祖母が大腸癌だったのでそういう家系なのかもしれない。え~!と思ったけれどあと2~3年はあの経験をしなくていいのだ。大腸カメラをやる側からすると、1日に何件もある検査のひとつにすぎないような気がしてしまうが、患者の立場になるとたいへんな精神状態を乗り越えなければならないものなのだな、と悟ることができた体験だった。お会計は18000円、ポリープを取って病理検査をしたので通常より高くなっていたはずだ。痛いときもあったけれどそれは1分間続かないくらいだったし、今回は鎮静剤を使っていなかった。大腸カメラは気合いを入れればいつでもできる検査だと思うので、必要な人は受けてみることをおすすめします。


※1 小林化工に業務停止命令
https://news.yahoo.co.jp/articles/f08f4fe3d737175829e66595bc0e7318abf8592a