沼に飛ぶ!!

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「お前はお父さんの本当の子じゃないんだよ」といういたずら電話の犯人がわかった話

 電話が嫌いだ。あのうるさい着信音が鳴ると生理的な不快感でいっぱいになる。たいていの事はメールやラインで済むのに連絡手段が電話しかないと困るし、急ぎの用でもないのに電話をかけてくるやつも滅んでほしい。しかし私の職場内の連絡手段はPHSなので、勤務時間中よく鳴るプププ…という音に悩まされている。少しでも早く鳴るのを止めてほしいので出来るだけ早く出るようにしている。厚かましくも、人の時間に突然けたたましい音で割り込んで強制的にコミュニケーションをとらせる電話というものは、人類最悪の発明だろう。


 私は小学生から高校生になるまでのかなり長い期間、「お前はお父さんの本当の子じゃないんだよ」といういたずら電話に悩まされていた。他のバリエーションとして「お前は浮気で出来た子なんだよ」、「◯◯(私の通っていた中学校)は裏口なんでしょ」といったものもあった。いたずら電話の主は私と同じ年頃の女の子供の声で、私が家の電話に出たときのみ、少し無言になってから「お前はお父さんの本当の子じゃないんだよ」といった事を言ってからブツっと電話を切る。両親に相談して家の電話番号を変えてもらってもその電話は来た。私はもう家の電話に出ないようにしていたが、数年たって忘れた頃にまた来る。当時は同じ学校の女生徒だと思っていた。その頃はそれぞれの家の電話番号が連絡網にのっていたので、同じ学年の生徒であれば電話番号が変わっても新しい番号を知ることが出来る。それにしても5年以上にわたってそんな電話をかけるものだろうか。それほど長い間同じ人に恨まれる覚えはなかった。私はほとんど家の電話に出ないようになっていたが、大学生になる頃にはそのいたずら電話自体来なくなっていたように記憶している。


 いたずら電話の犯人の正体がなんとなくわかったのは私が大学4年生の3月のことだった。父母から父には別の家庭があり、私の異母兄弟がいること、父母が結婚していないことを知らされた。そして今度は私の父母が結婚して、私と母の名字が父の名字に変わるということだった。これまで私にそんな重要な事を知らせていなかったことに対して、申し訳ないとか後ろめたそうな感じは一切なく、むしろ私のためにして面倒な手続きをしてやったという態度であった。私の異母兄弟は兄が3人と姉が1人いるらしい。ここで私はいたずら電話の主がその姉なのではないかと思った。私と同じ年頃の女の子供の声、「お前はお父さんの本当の子じゃないんだよ」という言葉、数年にわたって嫌がらせをするだけの理由がある人、電話番号が変わっても新しい番号を知りうる人。それに該当するのは会ったこともない姉しかいない。その事を父に聞くと、「あいつは◯◯(私の通っていた中学校)に受かる頭ないからな!嫉妬したんだろ」とのことだった。異母兄弟の長兄にも聞いてみたところ「わからないけど」と言って否定も肯定もしなかった。でもそれが答えだと思う。兄が姉のことをそんなことをするはずがないと思うなら、そう言うはずだ。そう言わなかったのは兄のなかでその可能性が高いのではないか、と考えたからではないだろうか。


 真相を確かめることは出来ない。もし犯人が姉ではなく第三者であるなら、姉に不信感を抱かせるという事を私に強いたということになる。だが状況からしていたずら電話の主は姉だろう。私は父が別の家庭を持っていることを大人になるまで知らず、父と母/私の名字が違うことに関心も持たずにのんきに過ごしていた。その間、姉は何を考えて暮らしてきたのだろう。「これからはママと◯◯(私の名前)でやっていくんだ」と平気な顔で言っていた父が理解出来ない。今でも私の前で異母兄弟のことを「あいつはろくに仕事が出来ない」、「親の言うこと聞かないでろくな生活してない」などと言える父が理解出来ない。いつか姉に会って、姉の気持ちを聞けるの日が来るのだろうか。そんな機会がこれからあるとすれば父の葬式だろうが、その時私はおそらく軽く会釈をするくらいしか出来ないだろう。それでいいし、血縁だろうとそんなものだと思う。