沼に飛ぶ!!

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映画、小さき麦の花 感想

 

 邦題「小さき麦の花」でキービジュアルも美しい農村風景なので、「田舎の地道な清貧生活っていいよね、みんな自然に帰ろう!」みたいな映画と思いきや、中国農村部の貧しい障害者カップルの生活が妻の事故死で終わり、がんばって建てた家はショベルカーで潰されるという胸糞映画ですよ。

 私は英題が「return to dust」な事からこれは夫か妻かロバが死ぬな、と思いながら見てました。夫がRh(-)の希少な血液型で村の有力者に何度も献血するというシーンがあるので、夫がその関係で死ぬだろう、というかロバが死ぬなんて悲しすぎるから見たくない!と予想しましたが、妻があっさり事故死してしまいました。

 これだけだと悲しい結末のようですが、ラストシーンで①夫は農村の生活をやめるのに種麦を購入している、②都会の集合住宅の前に小さな畑がある、③家の解体シーンで夫が映らずそれまでほぼ固定されていた画角が急に上下にブレる、④ロバの顔が近い!ことから野に放ったロバが帰ってきて、主人公はそれに乗って新生活に向かう、というハッピーエンドだったのではないでしょうか。それならなぜそれを映さないかというと、政府の方針で今まで築いてきた農村生活を半強制的に都会化させておいて、よかったねーで済ませるシーンを悲惨に描くことで、中国では禁忌であるところの体制批判をしたかったのかもしれません。

 とにかくロバがかわいい!ロバに始まりロバに終わる映画で、特に関係ないシーンでもロバが画面の隅にいるのでずっとロバばかり見てました。大きさはちょっとしたポニーくらいで体毛はこげ茶っぽいけど目のまわりと足は白い。性格は穏やかでよくはたらく。道具をつなげることで畑を耕したりならしたり、当然運搬にも使われるし、家を建てるとき土レンガを上に運ぶ滑車にも使われていた。人にこき使われて黙々とはたらくロバは主人公たちの象徴だし、妻の「あなたに初めて会ったとき、他の人にぶたれていたロバに優しくエサをやっていた。あなたといっしょになってよかった」という言葉はこの映画そのものみたいだし、とにかくロバがキーパーソン!ロバが演技をするのがすごい。咳をする妻を心配そうに見るロバかわいい。自由になったのにこちらを振り返ってなかなか行こうとしないラスカルみたいなロバかわいい。「小さき麦の花」最高のロバ映画でした。