沼に飛ぶ!!

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父への書簡

 

 

 わたしがパパにされたことが苦しかったとを話せば、「人のせいにするな」「過去のことをいつまでも言うな」「誰のおかげで医学部に行けたと思ってるんだ」と言われる。パパがわたしのためにしてくれたことには感謝している。でもだからいって、パパがわたしにひどい言葉で傷つけたこと、わたしを侮辱したこと、過干渉とコントロールでわたしを苦しめたことを埋め合わせることにはならないと思う。

 

 大学受験の頃、模擬試験の悪い結果をつきつけられて、長時間にわたって責められた。それはわたしにとって、つらく耐えがたい屈辱だった。パパに怒鳴られて1時間以上泣いて泣き疲れて寝ていたけれど、そんな時間があったらもっと勉強したほうが効率的だったと思う。

 

 医師になって5年目、メンタルを崩して目黒区の家に戻ったとき、パパの反応は冷たいものだった。わたしはかねてからの気分の落ちこみに加え、吐き気や立ちくらみ/倦怠感/食欲不振/便秘/過眠といった身体的な症状に悩まされており、わたしはだめな人間だ、と思って病院のトイレで一人で泣いてばかりいた。だがパパはわたしの精神疾患を理解しようとせず、実家で何もしない私に対して着替えろ風呂に入れと怒鳴ったりしていた。食事の時間は沈黙で気まずく、話しかけても冷たい反応をされるだけだった。ママは私に「外で部屋を借りなさい、パパはもう少しで爆発しちゃうから」と言った。

 

 他にもわたしの服装や体型、交友関係、仕事やアルバイト、趣味、部活動にいたるまであらゆる過干渉を受けた。わたしにとって家は息苦しいものであり、疲れた表情、つらい表情をしているだけで「なんでそんな顔しているんだ」と怒られた。それはわたしが成人になっても、経済的に独立しても変わらなかった。干渉はわたしの医師としてのプライドにまで及んだ。パパは「患者さんに優しくしろ」「医師だからといって偉そうにするな」と何度も恐ろしい顔をして言った。そういう説教を受けるということはわたしは患者さんに優しくできていないのだろうか。偉そうにしているのだろうか。

 

 パパは人やもののアラを探し、口をへの字に曲げて悪口を言ってばかりだと思う。会社のだれだれが頭が悪い、親戚のだれだれが愚かだ、芸能人のだれだれが馬鹿だというような話をしょっちゅうしている。そしてそれはわたしにも及ぶ。パパはわたしのアラをいつも探し、わたしが何をしてもけっして満足することはなく、延々と説教や干渉を続ける。わたしを下に見て、わたしが自分の思い通りにならないとママにお前のしつけが悪いと言ったり、調子にのっている、つけあがっている、などと言って馬鹿にする。パパは絶対に自分が正しい、どんなことでも子供は親の言うことを聞くべきだ、という思想を持っている。わたしはパパに対する行き場のない怒りをずっと抑えこんでいる。

 

 パパは金を稼げる人間か、役にたつかたたないか、といった価値観に支配されているのだと思う。人のアラ探しばかりしているし、旅行や食事を共にすればおいしいものを食べれたかとかいいホテルに泊まれたのかといったことばかり気にして不満を言っている。だがそういった価値観はいずれパパ自身の首をしめることになる。だれもみな老いて、死んで役にたたなくなる。金を稼げる人間か、役にたつかたたないか、といった価値観を持っていると自分が役にたたない迷惑な存在になったとき、自分が価値を失ったように感じてがっかりしてしまうのではないだろうか。そして周囲の人間には役にたたない、迷惑な存在だと思われて孤独になる。

 

 大切なのは家族で同じ時間を過ごせることであって、得をするか損をするか、役にたつかたたないか、なんてことではないのではないだろうか。体の動かないお年寄りや障がい者は無価値だろうか。意味がない存在ならそういった患者さんに優しくするのはなんなのだろうか。

 

 本当に大切なのは家族で同じ時間を過ごせることだと思う。パパの行動の根源には自分自身の人生に対する不満だとか自分が見捨てられることへの不安があるのかもしれない。わたしは本当はパパと旅行に行ったり、食事やイベントに行きたいと思う。日々あったことや悩みを話し合ったりしたい。でも怒鳴られることは怖いし、逃げ場のないところで大声でわめかれるのは生命の危機を感じさせるくらいのストレスだからそういうことがあるなら、いっしょにはいられない。